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2009.09.19

★森博嗣『トーマの心臓』を読む。透明で端正な物語。

今何故このタイミングで?という時にさらっと出す所が森博嗣らしいのかもしれない、森版「トーマの心臓」を読みました。

言わずと知れた萩尾望都の不朽の名作まんが「トーマの心臓」を、森さんの視点から構築し直した、小説です。

森博嗣は実は4冊位読んで挫折しちゃったので「すべてがFになる」の頃の初期しか知らないんだけど、理系作家らしい透明な美しさがとても好きで、特にタイトルの付け方がいつも本当に素晴らしく美しくて大好きです。

彼が萩尾望都をものすごくリスペクトしている事も知っているので、安心して読み始めました。

とっても謎なのは日本人になっている事なのだが、それも注意深く読んでいないと気づかない位に世界観はそのままに、どちらかと言えば年齢を上げた事から来るみんなの大人度の高さが印象に残った。
それから、小説だからなのか、森さんだからなのか?感情を言葉にて語りつくすというか説明しようとする、むしろそれは日本人ではなくヨーロッパの人なのでは?という饒舌さと言葉に対する誠実さ。

文章はやはり透明で端正で、登場人物はまんがよりも大分饒舌だけれども無駄なものがなく、美しい物語でした。

オスカー目線で語られるトーマなので、「トーマの心臓」な割りにトーマ結構どうでもいいとか、ユーリの設定変更はびっくりとか、え、そのシーンは3人で語っちゃうんだとか、何よりもオスカー父、作中だと名前が明かされないまんがだとグスタフのあの場面の設定変更は何故なんだ~とか、元のまんがを読んでいる者としてのツッコミどころは多々ありますが、でも、小説化する以上は森さん視点だとこうなる、が必要だし、充分楽しめる物語でよかった。

でも何で日本人設定なんだろ?内容からするに一次大戦前後なのでしょうか?何か全然関係ないけど、摩利と新吾を思い出してみたり(単に寮生活という一点で)、長岡良子の大正叙情ロマンシリーズを思い出してみたり。

大昔、森さんは何かのインタビューにて「男性である自分は女性の事は分からない」というスタンスではなく「日本人である自分は日本人の事は分かるが外国人のことは分からない。」というスタンスで話をしていたのがすごく面白いなと思った事がある。それは萌絵をどう描いてるかみたいな質問に対しての答えで、女性と言っても日本人だから日本人の事はわかる、と。
もしかしたらその思いは今も同じで、トーマを小説化するにあたり、国を変えたのかなとかちょっと思うのであった。

あ、あと忘れてはいけないのは!萩尾さんがこの作品のために新たにちょっと大人になっているオスカーやらユーリやらエーリクやらを描きおろした挿絵があることです!

こっちの日記ではなく閑古鳥に書くべき話題かなという気もしたが・・・やっぱり、読みながら再び生きて動く彼ら=久々にスタジオライフ舞台版「トーマの心臓」が見たくなった。
劇団員の実年齢がガンガン上がっている今、小説版トーマを舞台化してみるのもまた見てみたいな~という気もします。


↑追記。来年3月に、トーマの心臓&訪問者連鎖公演が発表されました。
うれしい。でも作品としてより好きなのは訪問者なのでその方がうれしかったりもするけど。

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