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2007.11.15

★『蜘蛛女のキス』を振り返る。オギーの毒と罠。

今回の荻田浩一版『蜘蛛女のキス』を見終わって数日経って、オギーインタビューとかも読んで、ちょっと落ち着いて振り返ると・・・やっぱりオギーは無駄に観客の深読みを誘いまくる(笑)演出家だ。とあらためて思う。

前回書いたように、私はハロルド版が伝説となって、派手で激しいミュージカルを見にいくつもりで行っちゃったから非常に戸惑ったのだけど、改めて見たものを振り返ってみると、全編オギーらしい伏線とか謎かけとかが張り巡らされている。

今回のキャスティングはどの位意図されたものか分からないけど、何かすごくヴァレンティンもモリーナも「演じている」印象があった。
役者が役を演じているという意味ではなくて、モリーナはヴァレンティンに対して、ヴァレンティンはモリーナに対して。

それは役者陣に対する私の予断も大きいと思うのだけど。
石井さんのモリーナは、最後の姿が本来だ。という印象が残っている。強くなったのではなくて。元々彼が持っているものが最後に素直に出てきた。
でもそれは私が石井一孝さんに持っている印象も多分影響している。

浦井さんのヴァレンティンがインテリに見えるとか感情と行動が一致してないと思ったのは、何て言うか意識がある時の彼は常に自分が相手にどう映っているのかを意識して、どう見せようか考えて行動しているように見えたから。
これもまた、結構単純に「ご飯にがっつくヴァレンティン」とかの行動が浦井健治さんイメージに無くて何か違和感があったとかの影響があるだろうし。

ミュージカルファンで、この二人を全く見た事が無くて何の事前情報も無い、という方はなかなかいないと思う。特別興味は無くても1回や2回は生で見てる可能性が高いだろうし、見た事無くても雑誌で見た事あるとか今までどんな役やってるかとか、何らかの情報には触れていると思われる。
だからオギーのこのキャストの使い方は観客の予断込みなのかな~とか深読みしてみたり。

ミュージカルに興味はないけどコムちゃんファン、とかの方で、今回まっさらな状態でこのモリーナとヴァレンティンを見た場合、彼らはどう映るんだろう。
普通に「モリーナの人って南米っぽい顔で濃いけど女らしいわ!」とか←見た目の濃さに拘る自分(笑)。「ヴァレンティンは粗野で強そうだけど脆そうな人だ」とか、普通に思うのであろうか。気になる。


うーん。刑務所で他に誰も居なくて二人っきりでずーっと否応なく向き合わされている状態のはずなんだけど、その割りにお互いに一線は越えていないというか、本当の所は見せてない?みたいな印象がちょっとある。

時間の流れで言えば、子どもみたいに境界線引いて「来るな~っ」とか言ってた1幕最初から、オーロラの映画の話をリクエストしてたり生い立ち語ってみたりする2幕に向かってもちろん二人の距離は縮まってお互い心を開いて行ってるんだろうけど。でもそれはお互いの存在に慣れたという事もあるだろうし。

何て言うかお互いに見せたい自分を見せている感じ。←いい所を見せたい!ではなくて。「自分はこういう人間だ」と思ってもらいたいように振舞う。それはマイナスの方向にも。

でもごくたまにふと本来の自分がすっと顔を出していると感じる時があって、だから今彼らが本当は何を考えているのか分かりづらい。

★☆★☆★☆★☆★☆★☆

うーん。「見せたい自分を見せてる」のではなくて、「誰かの視点から見た誰か」という視点の移動があるのかもしれないとも思う。

今回のオギー版は、現実と妄想と回想シーンがお互いに侵食していくような曖昧さがあって、一体どこまでが現実でどこまでが願望なのか分からなくなってくる不確かな世界。

だから、自分が今見ているものは、「モリーナとヴァレンティンが置かれている現実」を客観的に見ている状態なのか、「モリーナに見えている世界」をモリーナの目を通して観客に示されている状態なのか、「ヴァレンティンの願望」なのか、どれでもないのか、見ていて結構混乱する。

映画を暗示しているのであろう音は何を意味しているのでしょう。

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