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2007.06.10

★加藤健一事務所『モスクワからの退却』を見る。

ライフ日記の方にも書きましたが。

初・加藤健一事務所の『モスクワからの退却』を見て来た。
レ・ミゼラブルとマチソワするという無謀観劇を実行したため、一日泣きすぎて具合悪くなりました(笑)。
頭ガンガンしたッス・・・。


さて初のカトケン。
ずっと見てみたかったがなかなか機会がなく、自分の中ではやっと見ることができた~という感慨が。

劇場に入ると男性客も多いし年齢層がかなり上め。落ち着いた観客層で私の気持ちも落ち着く(笑)。
案内やチケット切り、パンフ販売等を研修生たちがやっている。みんな普通に私服で可愛くてさわやか。
何かすごく幸福感UP。
幕が開く前に、お願い(携帯電話切って!とかの)とちょっとした導入レクチャーがある。一生懸命考えたんだろうな~というさわやかな存在感に心が和む。
休憩中にパンフを買った時もものすごくさわやかで可愛い子だったし幸せ(笑)。

★☆★☆★☆★☆★☆★☆

★平凡で善良な日々を淡々と送る歴史の教師エドワードと、ちょっとエキセントリックな性格で詩を愛するアリス夫婦。彼らには既に独立してロンドンで一人暮らしをしている32歳の息子ジェイミーがいる。

夫婦はいつも微妙に噛み合わないが、それも普通の日常の景色である。
しかし、33回目の結婚記念日を前に夫は突然家を出てしまう。
取り残された妻はどうするのか。独立して一人暮らしをしている息子はこの事態をどうするのか。

夫が愛読するナポレオンのロシア遠征を描いた「モスクワからの退却」になぞらえながら、物語は進む。
彼らはこの事態をどう収拾させるのか。彼らは、今後どう生きていくのか。


★「家族劇」というよりも「夫婦+子ども」の物語。33年連れ添ってきた夫婦の心が、一方だけが離れてしまいどうしようもなくすれ違って行く様子が切なくて苦しい。

どんな話か全く知らずに見にいったので、最初のやり取りを見ながら「すれ違っている夫婦が向き合って修復していく物語なのかな」と思った。が、いきなりエドワードがジェイミーに「別れようと思うんだ」と言い出したのですごく驚いた。

こういう夫婦ものすごく多そう!というすれ違いっぷりがすごく面白い。エディは「それ言っちゃダメだろう」という地雷をガンガン踏んでいっちゃう人なんだけど、こういう善良な夫はとても多いであろう。
いつもはぐらかされている気がして、苛立ってしまうアリスに共感する妻もすごくたくさんいると思う。

★恋愛とは、関係を維持していく事に対する努力は報われても、そもそも「好き」という感情に対する努力はしようがない、という事実を思い知らされて、しかもそれは30年の年月があっても全然重しにはならないという事がたまらなく切ない。
先週若者たちの愛の物語ロミジュリではいまいち伝わってこなかった「全く不可解に人は人を好きになる」というどうしようもなさをこの物語ですごく感じた。

エドワードは、アリスに対してすごく疲れてもいただろうけど、アンジェラという存在がいなかったらきっと、「そういうものだ」と思って諦めて生きていたかもしれない。
新たに愛する人を得て、初めて行動的になったように思う。33年一緒に生きてきて、息子もいて・・・でもやっぱり誰かを他に好きになっちゃったらもうどうしようもないんだな・・・と思う。切ない。


★物語に何度も登場する、エディが愛読する「モスクワからの退却」。アリスが好きな「詩」。
自分が生き残るためになりふり構っていられなかった極限状況と、アリスを置き去りに自分だけが「生き残った」罪悪感が共鳴する前者。
一方いくつか読まれる詩は、具体的に何かを説明している訳ではないのだが、その時の「気分」をすごくうまく伝えてくれた気がする。詩の内容が具体的にちゃんと分かっている訳ではなかったんだけど、2幕、詩を聞きながら涙が止まらなくなった。


★エディが1幕ラストで、アリスとの出会いを語る場面。
もう二度と戻れない淡々とした日常とか、光の中で輝いていた幸福の日々、といったものにものすごく弱いので、ここで涙決壊。(直後に休憩に入ってしまったので「今泣いてた人」の顔のままでかなり恥ずかしかった・・・。)

この夫婦の、もう戻れない淡々とした輝く日々を思うとただもう泣けて仕方なかった。
エディが途中でそんな30年を、出会ったことを「間違いだった」というのだけど、それはいくら何でもひどい。
それは一人息子であるジェイミーに対しても。


★ラスト、様々な感情を持てあましながら、死にたくなっちゃいながら、エディを殺したくなりながら、アリスはついにエディの家を訪れる。
この時に初めて、アリスとエディは真正面から向き合って話をして、お互いに通じ合う。
不安定だったアリスが初めてちょっと気持ちが落ち着いて現実が自分自身に対してすとんと落ちてきた感じがして、そしてちょっとだけ前進できそうな予感を見せる。

最後に、息子ジェイミーから、アリスという女性に対しての、エディという男性に対しての愛が語られ、見ている側も少しだけ気持ちが上を向いて、静かに幕を閉じる。

★いい作品を見ました。辛いし痛いしシリアスだしどうしようもなくて切なすぎるけど、でも、終わって何となく幸福だった。

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