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2007.06.17

★宝塚雪組「エリザベート」を見る。

宝塚の初演から11年。雪→星→宙→花→月とまわってついに戻ってきました雪組。

水夏希さんのトップお披露目公演です。
・・・が、そんな事は2幕の途中まで意識すらしなかった。
その位普通にトップです。

とうこちゃんもそうだけど、水さんも10年位ずーーーーっとスターだったので、トップスターである事に対して何の違和感も無いというか、何十年もトップさんみたいに自然だった。素晴らしい。

しかし水さんの主演舞台を見るのは初めてだったので気づいた事。
水さんの普段の声ってすごい可愛いッスね!!!あ~普段はすごく「ちかちゃん」て感じの声なんだ~。この方も基本はタータンわたさんライン=誰よりもヅカ男役!!だが素はとってもお嬢さん♪=な人なんだな~きっと。とか思った。
「水夏希です」と名乗ってはいるものの、初めて見にきた人はこの声の人とトートが同じ人だとは気づかない予感。

★☆★☆★☆★☆★☆★☆

さてエリザベート。

うーん正直見終わってすごくよかったんだけど複雑。

「一巡した」事をすごく感じた。5組でやったこと、東宝版が何度も再演されている事、そして何よりもウィーン版が来日した事の影響。演者にも観客にもこの物語が深く浸透しているのだ、という事を感じる。

演者は、「ウィーン版とは違う、宝塚ならではの異世界感を表現しよう!」という方向へ行っている人と「宝塚的である基本は押さえた上で、できる限りリアルな造型をする」という方向へ行っている人が混在しているように見えて、ちょっと落ち着かない。
基本的にハプスブルクの人々はスーパーリアル造型。=フランツとかゾフィとかリヒテンシュタインとか。
異世界の人たちはこれでもか!!と異世界。=トートとかヴィンディッシュとかマデレーネとか。
その狭間で揺れ動くエリザとルドルフ親子。

既に何度も異なった形態で上演されている事で、演者の表現が深まっているのもあると思う。
その事で、初演から形を変えずに続いてきた「宝塚らしい甘やかさ」「フランツとエリザベートの愛情」「エリザベートとトートの恋愛設定」がもう彼らには似合わなくなっている部分もあるような気がした。

そして何度も異なった形態で上演されている事で、観客の「エリザベート」への理解度、浸透度は確実に上がっている。今ならば「宝塚であること」と「エリザベートという作品」は、もっと冷徹なものになっても受け入れられるように思う。

今こそ宝塚版は東宝版にもっと寄っていっていいのではないかと思った。
ゆみこフランツととなみエリザベートなら、♪嵐も怖くない♪とラブラブした歌ではなく、最初からすれ違っていてもいいのではないか。夜のボートでしみじみとどうしようもなくやっぱりすれ違う二人、ができる人たちだと思う。

基本演出として、宝塚におけるエリザベートも「強さ」をより前面に出していると思うのだが、それが今までの枠の中だと微妙に不協和音が鳴る感じがする。

何ていうか・・・宝塚で初めて「エリザベート」という作品を見た初演の時の衝撃は今でも覚えている。
ヅカらしくない、でもものすごくヅカな世界。
一巡していく中で、それは「宝塚」という世界に見事に取り込まれて同じだけど全く違う作品になっていったと思う。安心感の中で見られる作品に。

再びの雪組。初演を見た時とはまた違うけれども「今まで見た事のない」斬新さを再び感じた。
けどそれは作品自体は一緒で、役者陣の演技形態に関してのみ思った事なので、全体がどうしても落ち着かない・・・。
今の彼らには、もうもっと冷徹で、でもヅカな、また別の「エリザベート」を作れるのではないか。
その事がもったいない気がする。

あと単純に、今回「すごくいい!」と思った人をフューチャーすべく東宝版を持ってきてくれ~と思った。
未来優希ゾフィーは何が何でも東宝版で入っているゾフィの新曲を歌ってから死ぬべきだ。とか。
何故立ともみパパととなみシシィの「パパみたいにリプライズ」が無いんだ~。とか。
ゆみこフランツは「最終答弁」ではなく是が非でも「悪夢」を演じるべきだ!!とか。

あと、いつでも謎なんだけど、特に今回のシシィの「私だけに」の前(自殺しようとする事)と後(歌い切ってその場に倒れる事)の行動がしっくりこないとか。
となみちゃんの閉塞感を表現するには「私だけに」はヅカ版の広がって行く空間ではなく、東宝最新版の部屋のセットの中で完結するものの方がいいのでは。とか。

トートの「死は逃げ場ではないぃぃ」はやっぱり変だよ。とか。

もちろん、宝塚ならではの人海戦術と華やかさが素晴らしい「計画通り」とか、セットの上に黒天使がポージングしているのが素敵な「ハンガリー独立運動」とか、宝塚版が一番好き!な場面もたくさんある。
それらと東宝版的な部分は融合できるのではないかな~と。

とりあえず、東京公演ではゾフィーの歌、入れてくれないかなあ~。
ハマコさん今回女役オンリーでフィナーレ出てないから2幕がちょっと寂しいんだもん。もう一曲大ナンバーが欲しいです。

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2007.06.13

★東宝「レ・ミゼラブル」を見る。

先週の事なのですがすまぬ。

私が見た主なキャストは・・・
・別所哲也バルジャン 鹿賀丈史ジャベール 坂本真綾エポニーヌ 渚あきファンテーヌ 菊地美香コゼット 藤岡正明マリウス 斎藤晴彦テナルディエ 阿知波悟美テナルディエの妻 岡幸二郎アンジョルラス 伊藤俊彦グランテール リトコゼ 佐藤瑠花 ガブローシュ 新井海人 他

★久々のレミゼ。あきちゃんがファンテで登場と聞き、本当はあきちゃんと石川禅ジャベの日に見たかったがそんな組合せは殆どなかった(泣)。
この日は鹿賀ジャベ、岡アンジョ、そして気になっていた別所バルとのことでチケットを入手。

★今回は微妙な席で、前の人の頭でかなり見難くストレスたまったッス(泣)。やっぱり観劇環境はもう少しなんとかしてほしい。安い買い物ではないのだし!
しかし見難い環境ではあったけど、司教様の銀のしょく台でもう泣き、ファンテーヌラストで泣き、2幕はエポラストで泣き、ガブラストで泣き、アンジョラストで泣き、カフェソングで泣き、コゼットの前から姿を消すとマリウスに言っている場面で泣き、バルジャンラスト、ファンテがきた瞬間から泣き、ひたすら号泣。
最近舞台を見て異常に泣く気がする。年取ったから??何か現実逃避したいことでも??謎。


★今回最大のびっくりは、ガブラストの曲が全然違うものになっていた事。
今までの「ちび犬でもやるときはやる」といった個人的な歌詞ではなく、世相を反映したものになっていてより「ああ無情」感がアップ。

★今回はあきちゃんメインだったので岡さんがアンジョである事をすっかり忘れていたが、登場時から目が釘付け。
そこにだけずっとスポットライトが当たっているかのようなものすごいカリスマ性だった。
今回は岡さんを見に来たような気がした。素晴らしかった。

★☆★印象的な人々をうだうだ語ってみる・・・。

★別所バルジャン
最近見たのが歌手バルジャンだったのもあってなのか、エリザベートで武田君やウッチーを見た時同様「役者」である事をすごく感じるバルジャンだった。
上手く言えないのだが、ジャンバルジャンという人物の何十年という年月をきちんと見せてくれている感じがする。彼の中で、何が変わって、何が変わらないのか、という事が伝わる。

また最後までその荒々しさとか、人としてダメな所とかがチラッチラッと顔を出す瞬間があって、すごく人間的なバルジャンだと思った。ただ綺麗なだけじゃない、不穏さを最後まで持っていたように思う。

マリウスとコゼットに対する揺れる思いも頑固親父のようで可愛い(笑)。
最後まで「父」ではなくて「男」という感じがすごくする。

彼がファンテにすごく思い入れてコゼットをなんとしても守り抜くぞ、と思う所を今まで「そういう事だから」と流していたが、今回見ていてすごく納得できた。彼にとってはファンテは天使というか神というか、彼にとっての信仰なんだなと。

リトルコゼットに対してものすごく優しい所も好印象。
単純に見た目が大きい、という要素もバルジャンとしてすごくプラスだったと思う。満足。


★鹿賀ジャベール
初登場時、何となく本調子じゃなさそう??に見えたんだけど、物語が進むに連れて迫力を増してダイナミックになっていったと思う。

鹿賀さんは本来どちらかと言えば個性派だと思うのだが、ジャベはすごく「基準」「スタンダード」だと思った。
今まで見て来た人たちは、それぞれの個性を生かしたバリエーションであって、基本はここ。みたいな感じ。

ジャベールにとっては「法の正義」が彼の全てを支える根幹で、それがバルジャンによって脅かされて最後には死に到る。とにかくいるだけで威圧感。信じるのは自分だけ。という隙の無い感覚。

・・・ただ「今私は鹿賀さんのジャベールを見ている」という幸福感にうっかり浸ってしまいよく分からない所も多々ある・・・。そして鹿賀さんの面白い動きやオリジナルアレンジ歌唱にあちこちはまる。
でも見られてうれしい。よかった。


★渚あきファンテ
本来ファンテはあきちゃんみたいな清潔感のあるお嬢さんみたいな人が堕ちて行くのだと思っていたのですごく楽しみにしていた。
が、この日は彼女の初日だったのもあって、まだ正直音に振り回されている感じがするし、声量がなくて迫力がない(泣)。動きもまだ硬い。娼婦の場面とか、「がんばってます!!」感がアリアリと分かる。

でもすごく可愛くて儚い存在で少女のような白い存在で、今までで一番「バルジャンにとっての光」である事がわかる。ああ、この人はバルジャンの天使なんだ、と。
この天使感をぽんと出せるのはあきちゃんならではだと思う。もう可愛いからそれでいいです(笑)。


★岡幸二郎アンジョルラス
☆本当に今回は岡さんを見に来た!と思った。
出ている間中ずっと釘付け。
赤がこんなに似合っていいだろうか。

別所さんもそうだけど、岡さんも「見た目で大きい」事はカリスマリーダーとしてすごくプラスだと思った。
原作でしつこい程に強調されるアンジョの姿形の美しさ、リーダーとしての統率力、華やかさ、遠くを見据える目。

ただキャストが若返ってしまった分、孤高のリーダー度が大幅アップして、その孤独感たるやすさまじいものがあって痛々しい。今回の学生たちは、アンジョとその他大勢。
1幕ラストの晴れやかなワン・デイ・モアとか、その晴れやかさに泣けた。

☆マリウスとのやり取り、グランテールとのやり取りを見ながら、岡さんのために「マリウスを石井さんor禅ちゃんにしてあげたい」と思い、自分のために「グランを戸井さんで見たい」と思った(笑)。

本来副リーダー的存在であるはずのマリウスだが藤岡さんは「皆のアイドル」ポジションの人。
弟のように目をかけて見守っている感じがした。
エポが死んだ時、マリウスが彼女を運んでいこうとするといきなりがばっと抱きしめて止めるんだけど、それがすごく印象に残っている。
が、何かもう弟に対する兄というよりも父の威厳みたいになっちゃってる所もあってそこは微妙なのだが。

本来マリウスは「自分の子どものように愛おしい」存在ではなくてあくまでも「同志」なはず。
だが、対マリウスでも岡アンジョは常に厳しいリーダーの顔しか見せられない。マリウスが子ども過ぎるため彼に対して心を許したくだけた態度が取れない。アンジョ自身が息をつける場所がどこにもない。

こんなにも孤独なアンジョを見ていて「ああ、石井さんか禅ちゃん(でも誰でも良いが対等な人)がマリウスであれば!!」と、岡さんのために思った・・・。

☆そしてアンジョルラスに対して信仰に近い愛を持つグランテール。
彼とアンジョの無言の睨み合いがあるのだが、やっぱり、ここは戸井さんのグランでがっつり見たい!!と思っ
た。
伊藤さんがダメな訳ではなくて、単に好みの問題なんだけど。今現在の岡さんの迫力と釣り合う人で、あと私好みのグランが戸井さんなので、見たいよ~と。


★藤岡マリウス
前回の衝撃的バカ坊ちゃん健在のマリウス。可愛い。やっぱりアイドル。学生さんがマリウスを見る目が全員お兄ちゃんになっている。
岡さんの孤独度はいやが上にもアップしてしまったが、アンジョルラスとの並びも自然でよかった。
アンジョルラスに憧れていて、彼に近づきたい、と思っている感じで。

藤岡マリウスは恋に浮かれた感がすごく出ていてよい。エポニーヌは本当に妹みたいなもので、その範囲では可愛がっていて、彼女が自分を好きだなんて思いつきもしないんだなと納得できる。
あと、コゼットに使いを出すところ、彼としてはこれでエポをバリケードから出して安全な場所に逃したいとも思ってるんだな~と改めて思って、何かいいヤツだけど全部ずれてる感じが残酷だと思った・・・。

やっぱり、♪愛で治せるならば~♪と真剣に思っている残酷さと人のよさが好き。
この人は真剣にコゼットを愛し、友を愛し、世を憂い、妹のようにエポを思い、真っ直ぐ生きて行くんだなと思う。
マリウスとコゼットの希望の中で幕を閉じるので、彼の持つ健やかな明るさはとても救われる。

★その他
・毎回いまいち印象に残らないコゼット・・・。菊地さんは小さくて可愛くて歌もちょっと声量が足りないかな~とは思うもののまあ良いと思うのだが。何でこんなに印象に残らない役になっちゃってるんだろう・・・。

・坂本真綾ちゃんのエポニーヌはただただ切ない。マリウスがどれだけぼんやりっ子でも一途に思う姿が可愛い。オンマイオウンみたいな大ナンバーよりも、初登場時の何気ない仕草とか、マリウスとコゼットの逢引きを切なく見ている所とか、恵みの雨で満たされている所が可愛くて切なかった。

・斎藤晴彦テナルディエ&阿知波悟美テナルディエの妻。斎藤さんと一番相性のいいテナ妻なのでは?と思った。
世の中呪い度(笑)と諦め感が近い感じがする。
斎藤さんの小者感と何が何でも生きてやる!という暗い情念と、阿知波さんの現実的でずる賢くうまく立ち回っていこうとする感覚はすごく相性がいい。今までになく現実的というか、すごくしっかり者で札束しっかり数えます!という感じのテナ妻ですごく印象に残った。

・グランテール伊藤さん。グランは何故数学者の秋山仁さんのような見た目なのであろうか。すきっとした学生さんたちの中で異質すぎる。そして何かおっさんのように見える(泣)。
一人酒を飲み、熱い学生たちとは一線を画す懐疑的な人で、いつも彼に目が行く。アンジョとの長い睨み合いが好き。
・その他の学生さんが何回見ても誰が誰やらわからん(泣)。クールフェラックはすっきりしていてかっこいいッス。あとメガネ君がいて素敵だったのが、アンタは誰??

・リトコゼちゃんは声がすごく綺麗だった。好み。
ガブ君は小さくて元気いっぱい!!な子で悪ガキで生意気でよかった。

何度見てもやっぱりレミゼはいいなあと思う。
もう何日も経つが、今も頭をぐるぐる色々な曲が回ってます。

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2007.06.10

★加藤健一事務所『モスクワからの退却』を見る。

ライフ日記の方にも書きましたが。

初・加藤健一事務所の『モスクワからの退却』を見て来た。
レ・ミゼラブルとマチソワするという無謀観劇を実行したため、一日泣きすぎて具合悪くなりました(笑)。
頭ガンガンしたッス・・・。


さて初のカトケン。
ずっと見てみたかったがなかなか機会がなく、自分の中ではやっと見ることができた~という感慨が。

劇場に入ると男性客も多いし年齢層がかなり上め。落ち着いた観客層で私の気持ちも落ち着く(笑)。
案内やチケット切り、パンフ販売等を研修生たちがやっている。みんな普通に私服で可愛くてさわやか。
何かすごく幸福感UP。
幕が開く前に、お願い(携帯電話切って!とかの)とちょっとした導入レクチャーがある。一生懸命考えたんだろうな~というさわやかな存在感に心が和む。
休憩中にパンフを買った時もものすごくさわやかで可愛い子だったし幸せ(笑)。

★☆★☆★☆★☆★☆★☆

★平凡で善良な日々を淡々と送る歴史の教師エドワードと、ちょっとエキセントリックな性格で詩を愛するアリス夫婦。彼らには既に独立してロンドンで一人暮らしをしている32歳の息子ジェイミーがいる。

夫婦はいつも微妙に噛み合わないが、それも普通の日常の景色である。
しかし、33回目の結婚記念日を前に夫は突然家を出てしまう。
取り残された妻はどうするのか。独立して一人暮らしをしている息子はこの事態をどうするのか。

夫が愛読するナポレオンのロシア遠征を描いた「モスクワからの退却」になぞらえながら、物語は進む。
彼らはこの事態をどう収拾させるのか。彼らは、今後どう生きていくのか。


★「家族劇」というよりも「夫婦+子ども」の物語。33年連れ添ってきた夫婦の心が、一方だけが離れてしまいどうしようもなくすれ違って行く様子が切なくて苦しい。

どんな話か全く知らずに見にいったので、最初のやり取りを見ながら「すれ違っている夫婦が向き合って修復していく物語なのかな」と思った。が、いきなりエドワードがジェイミーに「別れようと思うんだ」と言い出したのですごく驚いた。

こういう夫婦ものすごく多そう!というすれ違いっぷりがすごく面白い。エディは「それ言っちゃダメだろう」という地雷をガンガン踏んでいっちゃう人なんだけど、こういう善良な夫はとても多いであろう。
いつもはぐらかされている気がして、苛立ってしまうアリスに共感する妻もすごくたくさんいると思う。

★恋愛とは、関係を維持していく事に対する努力は報われても、そもそも「好き」という感情に対する努力はしようがない、という事実を思い知らされて、しかもそれは30年の年月があっても全然重しにはならないという事がたまらなく切ない。
先週若者たちの愛の物語ロミジュリではいまいち伝わってこなかった「全く不可解に人は人を好きになる」というどうしようもなさをこの物語ですごく感じた。

エドワードは、アリスに対してすごく疲れてもいただろうけど、アンジェラという存在がいなかったらきっと、「そういうものだ」と思って諦めて生きていたかもしれない。
新たに愛する人を得て、初めて行動的になったように思う。33年一緒に生きてきて、息子もいて・・・でもやっぱり誰かを他に好きになっちゃったらもうどうしようもないんだな・・・と思う。切ない。


★物語に何度も登場する、エディが愛読する「モスクワからの退却」。アリスが好きな「詩」。
自分が生き残るためになりふり構っていられなかった極限状況と、アリスを置き去りに自分だけが「生き残った」罪悪感が共鳴する前者。
一方いくつか読まれる詩は、具体的に何かを説明している訳ではないのだが、その時の「気分」をすごくうまく伝えてくれた気がする。詩の内容が具体的にちゃんと分かっている訳ではなかったんだけど、2幕、詩を聞きながら涙が止まらなくなった。


★エディが1幕ラストで、アリスとの出会いを語る場面。
もう二度と戻れない淡々とした日常とか、光の中で輝いていた幸福の日々、といったものにものすごく弱いので、ここで涙決壊。(直後に休憩に入ってしまったので「今泣いてた人」の顔のままでかなり恥ずかしかった・・・。)

この夫婦の、もう戻れない淡々とした輝く日々を思うとただもう泣けて仕方なかった。
エディが途中でそんな30年を、出会ったことを「間違いだった」というのだけど、それはいくら何でもひどい。
それは一人息子であるジェイミーに対しても。


★ラスト、様々な感情を持てあましながら、死にたくなっちゃいながら、エディを殺したくなりながら、アリスはついにエディの家を訪れる。
この時に初めて、アリスとエディは真正面から向き合って話をして、お互いに通じ合う。
不安定だったアリスが初めてちょっと気持ちが落ち着いて現実が自分自身に対してすとんと落ちてきた感じがして、そしてちょっとだけ前進できそうな予感を見せる。

最後に、息子ジェイミーから、アリスという女性に対しての、エディという男性に対しての愛が語られ、見ている側も少しだけ気持ちが上を向いて、静かに幕を閉じる。

★いい作品を見ました。辛いし痛いしシリアスだしどうしようもなくて切なすぎるけど、でも、終わって何となく幸福だった。

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